読書猿『独学大全』 第1話(全3話)【書評】

更新日:1月16日



独学=自分と向き合う



幸福を求めるならば、自分と向き合う必要があり、

自分と向き合うならば、学ぶ必要がある。


学びは他者から教えてもらう学び、

自ら学ぶ学び、つまり独学がある。


『独学大全』は、

独学者のために、独学者が書いた本だ。


本の帯にも書いてある通り、

『独学の百科事典』となっている。


百科事典なので、どこから読み始めても

その学びを深めることができる。


机の脇へ置いておけば、

辞書のように知りたい箇所だけ

抜き取るように読むこともできる。



著者は読書猿さん。

かつては読書が苦手だったと言う。


しかし、2008年にブログを開設し、

ギリシア時代の古典から、最新の論文までを

ブログで投稿しているうちに哲学者となった。


そんな哲学者曰く、独学者は学ぶことを、

「誰かに要求されたわけではなく、強いられたわけでもない」

と言う。確かにそうだ。


責任も拘束もされないかわりに、保証はない。

どれだけ励んでも利益や称賛を得られるわけでもない。

それゆえに、途中で挫折、中断しやすい。


だからこそこの本がある。


ちなみに、この本は752ページからなる。

手に持つと手首が痛くなるほどの分厚さだ。


「読書する」という気構えで読む本ではないと思う。

あくまでも、独学を追求し続けるための常備薬のような本だ。



この本では持続的に独学を発展させるための

『55の技法』が詰め込まれている。



そんな『55』の技法から、3つを紹介してみようと思う。

テーマは『言葉と向き合う3つの技法』




1つ目 『ぐぐる以外の武器』



検索エンジンで知りたいことを検索するが、

的を得たな答えが見つからないことがある。


ぐぐる以外の武器を持つということは、

精度の高い答えを導くことを目的とし、

検索語を磨きあげることを言う。


まず、思いつきのワードで検索するのではなく、

いくつかのワードを準備しておくことが重用となる。


例えば、コトバンクの活用。

このコトバンクで、検索したいワードを入力する。

入力をすると、似た言葉がいくつか表示される。

この、似た言葉を一つ一つ、検索する。


すると検索結果の違いが、目で見てとれる。



もう一つの武器は、共起フレーズをストックしておくこと。

共起フレーズとは、一つの言葉から連想される

複数の言葉のをさす。


例えば「選挙」という言葉。


「選挙」という言葉に対して、

「出馬」という 言葉が同時に使用される。

他にも「投票」などもある。



このように、一つの言葉から、

同時に使われる言葉のことを、共起フレーズという。


そして、さらにもう一つの武器、

除外フレーズを決めること。


除外フレーズを決めることで

検索結果の精度は高くなる。



これが『ぐぐる以外の武器を持つ』ということ




2つ目『集めた資料を整理する』


夢は「巨人の肩に乗って見ることで実現」しやすくなる。

しかし、巨人の肩は網目状になっている。


何かを知りたい時に、本を読む。

しかし、これさえあれば足りるという一冊は無い。

ぴったりの一冊と言い切れる本が存在することはない。


世界にあるのは、不完全な数冊である。

だからこそ読み通す以上のことが求められる。



「読み通す以上のこと」とは、

点の読書から、線の読書へ、そして、

線の読書から面の読書にすること。


『読み合わせる』『読み比べる』『読みつなげる』


未だ文献のない領域に踏み出すことを言う。



ここで、「集めた資料を整理する技法』

3つのマトリクスを紹介したい。


『目次マトリクス』

『引用マトリクス』

『要素マトリクス』


書籍や論文をまとめてマトリクスを作成する。

これをおこなうことで専門家の知見が深まる。


まずは目次マトリクスから作成する。

次に、引用マトリクス、要素マトリクスへと移る。


マトリクスを作成するメリットは、

資料を俯瞰して見れること。



これをすることで、点の読書から線の読書へ

そして、面の読書へと進化させることができる。



ようするに『複数の本を一望化すること』が重用


そして、連絡通路を設けること。

これをすることでアウトプットが容易になる。


俯瞰して、関連すること、相違すること、

これらを高い位置から見ること。



集めた資料を整理することで見えてくる世界がある。




3つ目『読めないことを自覚する』


生まれてから、意識することなく

使っている言葉を母語という。


普段の生活で使い続けているので

不足を感じることは少ない。


しかし、機能的非識字者が

存在することは知られている。


機能的非識字とは、

文字自体を読むことはできるが、

文章の意味や内容が十分に

理解できない状態をいう。


機能的非識字とまでいかなくとも、

書き言葉理解する能力は個人差が大きい。



母語を学ぶのに最も難しいのは、

その必要性を自覚すること。


基本的な読み書きができて、

日常的な会話をする程度の

識字能力はあるからこそ、

母語に不足を感じることが少ない。


だからこそ必要だという自覚が芽生えない。



では、どうすれば母語の不足を

感じることができるのだろうか?



まずは、不足を感じる機会をつくること。

そして、不足を感じた事実から目を背けないこと。



例えば、本をを読み、理解できない場面に

遭遇しても読めない理由を他責にしない。


著者のせいにしてみたり、

「そもそも私にはふさわしくない」

などと読めない事実から目を背けない。


メールのやりとりで、

相手の言わんとしていることが

理解できないこともあるかもしれない。


しかし、これを相手のせいにするのではなく

理解につとめることで不足が見えてくる。


書き言葉は、独学者にとって

リターンの大きい学習投資になる。


時間と労力を費やしてでも

学ぶべきものであり、価値も高い。


特に、メールやチャットでやり取りをする現代はなおさらに。



母語を学びなおすために有効な考えが紹介されている。



1.『おなじみ同士の言葉・概念の組み合わせを蓄える』


2.『論理はそもそも対話である』


3.『チャリティーの原理』



これら3つの考え方を取り入れるだけで、

母語の学び、書き言葉の理解を深めることができる。




以上の3つが、


『言葉と向き合う』ために伝えたい3つの技法だ。



大人が学びを継続させるためには

独学は必須であることは疑う余地はない。


独学を続けるための技術は、

この本1冊で大部分をカバーできる。


それだけ内容の濃い1冊となっている。

独学をこの先も続けたいと思うなら、

この一冊を手に取ることを心からお勧めする。